インドネシアを代表する7つの財閥とその主要な事業内容
- 公開
- 2023/07/01
- 更新
- 2023/12/24
- この記事は約7分15秒で読めます。
財閥とは、特定の市場において大きなシェアを占める企業グループのことです。1945年に日本の財閥はすでに解体していますが、三菱や三井、住友など、財閥の事業を受け継ぐ企業は現在も大きな影響力を持っています。
一方、インドネシアには現在も財閥が存在し、その数は30社以上にのぼります。分野は農林業や自動車、小売り、IT、エネルギーなど幅広く、これからインドネシアへ進出する日本企業にとっては把握しておきたい存在です。
本記事では、インドネシアの財閥の中でも、代表的な7社を紹介します。
インドネシアの財閥の構造
インドネシアでは、マレー系の先住インドネシア人をpribmi(プリブミ)、海外から移住した人々をnon-pribmi(ノン・プリブミ)と呼んで区別することがあります。
インドネシアの財閥にはnon-pribmiが創業したものが多く、創業者のほとんどが華人・華僑(※)です。インドネシアの華人・華僑は人口のわずか3%程度ですが、マイノリティである彼らがビジネスで成功し、インドネシア経済へ大きな影響力を及ぼしていると言っても過言ではありません。
華人とは中国にルーツを持つ移民の中でも、居住国インドネシアの国籍を取得している人のこと。華僑とは中国にルーツを持つ移民の中でも、居住国インドネシアの国籍を取得していない人のこと。
インドネシアの総人口に占める華人の割合は正確に把握されていません。2010年の国勢調査では1.2%ですが、実際はさらに多いとされています。
インドネシアの華人・華僑について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
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インドネシアの華人・華僑の特徴(歴史的背景、性格、宗教、金銭感覚)とビジネス
インドネシアの華人・華僑の人口や富裕層が多い理由、性格的な特徴、仕事観、さらに彼らが手がける財閥とビジネスの例を紹介します。
インドネシアの代表的な財閥
ここでは、インドネシアを代表する7つの財閥の成り立ち、主要な事業、最近の動向などを紹介します。
Salim Group(サリム・グループ)
Salim Groupは小売り、食品、電気通信、自動車、IT、農業など幅広い事業を手がける財閥です。華人のSudono Salim(スドノ・サリム)氏が創業し、2023年6月現在は三男のAnthoni Salim(アンソニ―・サリム)氏が会長を務めています。
1950年代に創業者のSudono Salim氏は、軍に物資を供給することで当時の軍司令官であり後の大統領となるSoeharto(スハルト)氏と関係を深め、事業を成功へ導きました。一度はアジア通貨危機によりグループの崩壊寸前に陥っていますが、息子のAnthoni Salim氏が会長になってから再建し、今に至ります。
世界的に有名なインスタント麺indomieを手がけるIndofood(インドフード)や、コンビニチェーンのIndomaret(インドマレット)、インドネシア最大級の自動車メーカーの1つであり、日本のスズキや日野自動車とも合弁事業を行うIndomobil Group(インドモービル・グループ)などが傘下にあります。
最近は、メタバースプラットフォームの開発、インドネシア語版ポケモンカードの発売など、最新技術やトレンドに沿った事業を積極的に展開しています。
参考:Indofood
Astra International(アストラ・インターナショナル)
1957年に華人のWilliam Soeryadjaya(ウィリアム・スリヤジャヤ)氏が創業したAstra Internationalは、自動車事業を主軸に置く財閥です。日本企業がほぼ独占するインドネシアの自動車市場において、トヨタやダイハツ、ホンダと提携し、優位な立場にあります。
William Soeryadjaya氏が同じ華人の仲間とともに創業し、最初は貿易会社でした。
長男のEdward Soerjadjaja(エドワード・スリヤジャヤ)氏が銀行事業に失敗したことで一時は株式の76%を手放す危機に陥りましたが、先述の通り日本の自動車会社と組むなどの手法で事業を拡大。今では自動車以外にも金融、農業、重機、物流など事業範囲は多岐にわたります。
最近の大きな動きが、中古車売買のオンラインプラットフォームを立ち上げたことです。簡単で安全、透明性の高いプラットフォームを提供することで、インドネシアの自動車販売業界に新たなトレンドを生み出そうとしています。
また、食品のインターネット販売や遠隔医療のスタートアップへ出資するなど、デジタル分野で新しい事業に挑戦する動きも見逃せません。
参考1:Astra International
参考2:CNBC INDONESIA「Kisah Pendiri Astra yang Tak Pernah ‘Manjakan’ Penguasa」
参考3:日本経済新聞「インドネシア自動車の雄アストラ、スマホ決済や医療進出」
Sinar Mas Group(シナル・マス・グループ)
Sinar Mas Groupの創業者は華人のEka Tjipta Widjaja(エカ・チプタ・ウィジャヤ)氏で、貧困家庭の生まれであること、インドネシア語が流暢でないこと、国内の人脈が弱いことなど起業への困難は多くあったそうです。
長男のTeguh(テグー)氏には紙パルプ、三男のIndra(インドラ)氏には金融、四男のMuktar(ムクタル)氏には不動産を引き継がせ、家族の連携を重んじた同族経営で財を成しました。主要メンバーに家族を配置する同族経営には、家族を大切にする華人の考え方が反映されています。
傘下の企業にはアジア最大規模の製紙会社Asia Pulp and Paper(アジア・パルプ&ペーパー)や、ヤシの栽培からパームを使った商品の販売まで手がけるGolden Agri Resources(ゴールデン・アグリリソーシズ)などがあります。
また、2020年には日本の海外交通・都市開発事業支援機構と手を組み、インドネシアのインフラ開発・形成を推進するためのプラットフォームとしてシンガポール法人を共同で設立しました。インフラ開発へ力を入れるインドネシアにおいて、日本企業の高い技術力を活かせる取り組みとして期待が寄せられます。
参考1:sinarmas
参考2:Mitsui「インドネシア財閥の変容―創業家第3世代の動きを中⼼に―」
参考3:海外交通・都市開発事業支援機構「海外インフラ・プロジェクト形成のためのプラットフォーム構築へ」
Djarum Group(ジャルム・グループ)
Djarum GroupはDjarum(ジャルム)という銘柄のたばこの製造販売で財を築いた財閥で、現在はたばこの他に不動産開発、金融、家電の製造販売なども手がけています。
華人のOei Wie Gwan(オエイ・ウェイ・グワン)氏が創業し、最初は従業員が10人ほどの小さな会社として始まりましたが、たばこの味の良さで他社との差別化に成功し、多くのファンを魅了。
世界初の低タールたばこや、クローブなどの香料を混ぜた低ニコチンのクレテックたばこ(香料入りたばこ)を開発するなど、インドネシアのみならず世界のたばこ産業に大きな影響を与えています。
たばこ事業で成功を収めた後、不動産やホテル、銀行など事業の多角化を行いました。特に有名なのが、ジャカルタの大型ショッピングモールGrand Indonesia(グランド・インドネシア)です。さらに、一度は国営化された民間の大手銀行Bank Central Asia(バンク・セントラル・アジア)の経営権を得たことです。
現在は息子のRobert Budi Hartono(ロバート・ブディ・ハルトノ)氏がグループのCEOを務め、食品の配達や配車を行うスーパーアプリGojek(ゴジェック)、オンライン医療のスタートアップHalodoc(ハロドク)に積極的に投資するなど、将来性のあるビジネスを見抜く力を活かし、グループを成長させています。
参考1:DJARUM
参考2:Mitsui「インドネシア財閥の変容―創業家第3世代の動きを中⼼に―」
Lippo Group(リッポー・グループ)
Mochtar Riady (モフタル・リアディ)氏が創業したLippo Groupの始まりは、1948年創業のLippo Bank(リッポー・バンク)です。その後、Buana Bank(ブアナ・バンク)やPanin Bank(パニン・バンク)などの銀行を立ち上げ、小さな銀行を大きな銀行に成長させる事例を数々と作り、インドネシアの銀行業界に大きな変革をもたらしました。
金融のほかには不動産開発やIT、小売り、外食などの事業を展開しており、一般の人々に馴染みのある事業でいえば大手百貨店のMatahari Department Store(マタハリ・デパートメント・ストア)やスーパーマーケットのHypermart(ハイパーマート)が挙げられます。
もともと銀行で成り上がった財閥ではあるものの、今では不動産事業の色が濃く、なかでもジャカルタのすぐ西にあるTangeran(タンゲラン)に作った街Lippo Village(リッポー・ヴィレッジ)は、都市開発の1つの新しい形として注目を集めました。
Lippo Villageは2019年にソフトバンクと提携し、不動産や交通エコシステムにAIやIoTを活用し、街の更なる発展に向けて取り組むことで合意しています。
参考1:Lippo Group
参考2:Lippo Village
参考3:ソフトバンク「Lippo Karawaciとソフトバンク、AIやIoTを活用した先進的なソリューションの分野で提携」
Gudang Garam(グダン・ガラム)
先ほど紹介したDjarum Groupのライバルともいえるのが、大手たばこ会社のGudang Garamです。特に香料をまぜたクレテックたばこの生産者として知られ、国内外でシェアを獲得してきました。
創業者は華人のSurya Wonowidjojo(スーリヤ・ウォノウィジョジョ)氏で、現在は息子のSusio Wonowidjojo(スシオ・ウォノウィジョジョ)氏がCEOです。たばこ事業のほかには、石油化学、食品製造などの事業を手がけています。
日本のお菓子メーカーLOTTEの製品をインドネシア国内で製造・販売する事業も行っており、工場は丸紅が手がける西ジャワ州Bekasi(ブカシ)の工業団地MM2100にあります。
インドネシアでGudang Garamというとたばこのイメージが強いですが、ほかの事業としてはパーム油の原料であるアブラヤシのプランテーション経営をしています。
Gudang Garamは1990年代からパーム油の事業を開始。インドネシアでは2000年代以降にパーム油事業が急速に成長しました。現在はSusio Wonowidjojo氏自身が作った会社Makin Group(マキングループ)でパーム油事業を行っています。
参考1:Gudang Garam
参考2:CNBC INDONESIA「Raja Sawit RI: Gudang Garam Ternyata Tambah Kaya dari Sawit!」
Barito Pacific(バリト・パシフィック)
Barito Pacificは、石油化学や林業、プランテーションなどを手がける財閥です。原油から精製されるナフサを分解し、石油化学工業原料を製造する総合石油化学装置「ナフサクラッカー」を有しているのは、インドネシアではBarito Pacificだけだとされています。
1979年に華人のPrajogo Pangestu(プラジョゴ・パンゲスト)氏が設立したBarito Pacificは、1993年にはインドネシア証券取引所に上場。2007年にはインドネシアの石油化学メーカーChandra Asri Petrochemical(チャンドラ・アスリ・ペトロケミカル)、2008年にはポリプロピレン樹脂メーカーのTri Polyta(トリ・ポリタ)を買収するなど、着実にグループを大きくしています。
2021年には45兆ルピア(4,270億円)の売り上げがあり、Chandra Asri PetrochemicalとStar Energy Geothermal(スター・エナジー・ジオサーマル)の地熱発電事業が好調な業績に大きく貢献しています。
石油化学分野で業績を伸ばしてきたBarito Pacificですが、オフィスビルWisma Barito Pacific 2(ウィスマ・バリト・パシフィック)の建設や、パーティクルボードという木質ボードに使う接着剤の製造など、小規模なものから大規模なものまで幅広いビジネスを展開しています。
参考1:Barito Pacific
参考2:Voice Of Indonesia「Barito Pacific Milik Konglomerat Prajogo Pangestu Raup Pendapatan Rp45 Triliun dan Laba Rp1,56 Triliun di 2021」
円表記は2023年6月19日のレート(1ルピア=0.0095円)で換算し、記載しています。
インドネシアを知る上で見逃せない財閥のビジネス
財閥企業の事業といえば、交通インフラや不動産開発など大規模なビジネスが目立ちがちです。しかし、実際は大規模な事業だけでなく、まだ世の中には出回っていないような技術に投資し、小さな事業を大きくさせる動きも多くみられます。
資金力がありトレンドに敏感な財閥のビジネスは、インドネシア経済が今後どのような動きをするのか知る手掛かりにもなります。これからインドネシアへの進出を考える日本企業は、財閥がどのようなビジネスを始めるのかに目をつけておくのもおすすめです。
また、インドネシアの企業の動きを知るとともに、インドネシア進出を考える上で大切なことが市場調査です。弊社では11万人のインドネシア人を対象にアンケート調査を行い、調査後の方針決めに関する相談を担当者がサポートします。インドネシア人のニーズを知ることにも利用できるので、ご興味がありましたらお気軽にご相談ください。
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インドネシアの市場調査をするにあたり、100万円以上かけて分厚いレポートを手に入れるのではなく、もっと効率・効果的にリサーチを行うことをご提案しています。
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インドネシアの財閥の特徴を教えてください。
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インドネシアでは華人が創業した同族経営の財閥が多くなっています。
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インドネシアにはどのような財閥がありますか?
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インドネシアの財閥にはSalim Group(サリムグループ)やAstra International(アストラインターナショナル)、Sinar Mas Group(シナールマスグループ)、Djarum Group(ジャルムグループ)などがあります。
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インドネシアの財閥が手がけているビジネスを教えてください。
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インドネシアの財閥のビジネスは不動産や小売り、自動車、電気通信、農業など幅広い分野にわたります。
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読後のお願い
弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
そこで、弊社からの不躾なお願いになってしまうのですが、是非SNSでこちらの記事をご紹介いただけないでしょうか。一言コメントを添えてシェアしていただけると本当に嬉しいです。そうやってご紹介いただくことで関係者全員の励みにもなりますので、どうか応援宜しくお願いします!
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SNSでも積極的に情報発信をしています
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