インドネシア人に人気の日本語教材やオンラインコンテンツの特徴を比較
- 公開
- 2023/03/16
- 更新
- 2024/02/06
- この記事は約7分23秒で読めます。
国際交流基金の2021年度の調査によると、インドネシアには約71万人の日本語学習者がいます。彼らは高校、大学、日本語学校、あるいは自宅で、どのような教材を使い日本語を勉強するのでしょうか。
本記事ではインドネシア在住のインドネシア人がよく使う日本語教材と、それぞれの特徴をご紹介します。日本語学習のツールとしては、従来の教科書や参考書に加え、WebメディアやSNSなどのオンラインコンテンツも人気で、さまざまなレベルや内容のものが登場しています。
インドネシア人に人気の日本語教材
以下では、インドネシア国内の大学で日本語学科に所属している・していたインドネシア人の方に聞いた、実際に日本語学習で使っていた日本語教材やそれについての感想などをご紹介します。
教科書など
みんなの日本語(スリーエーネットワーク出版)
日本語の教科書の定番とも言える、基本的な文型・読み書きをカバーした総合的な教科書です。教科書とは別に教え方の手引きや問題集もあり、インドネシア語版も出版されているため、多くの教育現場で使用されています。
- 良い点:インドネシア語や英語の文法解説付きのものもあり、自習が可能。文法の説明が充実している。
- 悪い点:実際に普段使うかどうかという観点からは不自然な例文が多い。
まるごと(国際交流基金出版)

日本語能力試験(JLPT)を主催する国際交流基金が制作した教科書です。国際交流基金のウェブサイトで学習記録シートや音声ファイルなどの副教材が提供されています。
- 良い点:日本人が実際に使うような自然な例文が多い。
- 悪い点:文法解説が多く、初心者が独学に使うには難しい。
にほんご☆キラキラ1~3(国際交流基金出版)
国際交流基金のジャカルタ日本センターで制作された、インドネシアの高校の日本語カリキュラムに準拠した教科書です。
- 良い点:絵や練習問題が多いため、飽きずに勉強しやすい。
- 悪い点:ローマ字が少なく、主にひらがな・カタカナで書かれているため、ひらがな・カタカナをマスターしてからでないと使いにくい。
Sakura(学修堂出版)

インドネシアで出版される日本語の教科書で、インドネシア人学習者の間で最も有名なものの一つです。
- 良い点:インドネシアの出版社のものなので国内で入手しやすく、インドネシア語の解説がついている。
- 悪い点:文法解説が多く、初心者が独学に使うにはやや難しい。
教師と学習者のための日本語文型辞典(くろしお出版)
辞書では引きにくい日本語の文や節の意味・機能・用法に関わる形式をまとめた辞典。3,000以上の文型・表現形式の例文が載っています。
- 良い点:初級から上級レベルまでの文型を一冊でほぼ網羅している。
- 悪い点:文型の説明が日本語のみで、初級レベルの学習者には使いにくい。
日本語能力試験(JLPT)参考書
日本語能力試験対策(JLPT)は科目別・レベル別に様々な書籍が出されています。以下は、インドネシアでもよく知られている参考書をご紹介します。
日本語能力試験対策KIAT SUKSES(学修堂出版)

インドネシアの出版社である学修堂の参考書は、インドネシアの書店にもよく置かれています。JLPTの参考書としては級別の文法中心のテキスト『日本語能力試験対策KIAT SUKSES』や、予想問題集『SIMULASI UJIAN KEMAMPUAN BAHASA JEPANG 』などがあります。なお学修堂は、介護、情報工学、財政学など分野別の日本語の参考書も出版しています。
新完全マスター日本語能力試験(スリーエーネットワーク出版)
教科書『みんなの日本語』を制作している出版社の級別JLPT対策参考書です。「語彙」「読解」など単元別の参考書で、より深く勉強したい人、多くの例題にあたりたい人にピッタリです。日本の出版社の本ですが、輸入販売もされており、比較的手に入りやすくなっています。
日本語総まとめ(アスク出版)

こちらも級別・単元別で、上述の『新完全マスター』と同じく、インドネシアでも比較的流通量の多い参考書です。「1日2ページ、6週間(/8週間)で完成」というコンセプトで、勉強のスケジュールを立てやすいのが魅力です。kindle版も出ています。
ここまでインドネシア人学習者になじみのある日本語の教材を複数ご紹介しましたが、学修堂(Gakushudo)の教材を除くと、インドネシアの書店ではあまり取り扱われていないのが現状です。そのため、教育現場では教員が作成したオリジナルの教科書が使われることもあります。
熱心な日本語学習者の中には自習のために輸入本を取り扱う書店や通信販売で日本の出版社の教材を買い求める人もいますが、大学の図書館に置いてある教材を借りたり、友人同士で貸し借りしたりする人も多いそうです。
インドネシア人に人気のオンラインコンテンツ
Webメディア・モバイルアプリ
最近では紙の教材だけでなく、WebメディアやSNSを利用して日本語を学習することも非常に一般的になっています。こちらも同じく日本語学科で日本語を勉強している・していたインドネシア人の方に、実際に使っていたコンテンツを聞いてみました。
Nihongo eな
日本語を学ぶために使えるウェブサイトやツールがまとめられています。初級~中級向けのものが中心。
エリンが挑戦!日本語できます
国際交流基金のWebメディアで、動画やクイズ・マンガを通して文法や語彙を学べます。
HelloTalk
Language Partnerを見つけ、チャットや通話でお互いの母語を教えたり交流したりするためのアプリ。
NHK World-Japan
NHKワールドのウェブサイトでは、動画、ポッドキャスト、PDFなど様々な形式の日本語教材が提供されており、インドネシア語版が用意されているものもあります。
Kepo Jepang
こちらは弊社が運営する、インドネシアの日本語学習者・日本留学希望者向けWebメディアです。

基本的な単語や文法などの「日本語」カテゴリー、JLPTの情報や教材を含む「JLPT」カテゴリー、日本の生活情報や留学情報を紹介する「日本での生活」カテゴリーから構成されています。Instagramやニュースレターなどでも情報配信を行っています。
YouTubeやInstagramのアカウント

Webメディアだけでなく、YouTubeやInstagramで日本語や日本の文化について紹介するコンテンツを見ている人も多いようです。人気のアカウントをいくつかご紹介します。
WaGoMu #JapaneseClass(Youtube)
初心者向けから上級者向けまで幅広いレベルの日本語学習動画が数百本投稿されています。チャンネル登録者64.3万人。
日本語の森(YouTube)
JLPT対策や、教科書には無いような日常会話の用例など様々なコンテンツを扱っています。わかりやすい日本語で話されているので理解しやすいのが魅力。チャンネル登録者60.1万人。
harumon.japanese(Instagram)
インドネシア語で日本の文化や語彙を紹介しているアカウント。クスっと笑える投稿も多く、初心者から上級者まで楽しめる内容です。フォロワー13.4万人。
Kevin’s English room(Instagram)
日本とアメリカの文化や言語について紹介しているアカウント。日本語学習者向けというわけではありませんが、日本の不思議な点や日本語の理解しづらい点をおもしろく紹介しており、人気です。フォロワー62.7万人。
Sakura JLC(Instagram)
Sakura JLCはJLPT対策のオンラインレッスンを行っている団体で、日常生活に役立つショートフレーズ、単語、金言などを紹介するInstagramアカウントも運営しています。フォロワー6.6万人。

特に中級レベル以上になると、日本語学習者向けのコンテンツに限らず、日本での生活や日本の文化、日本人の価値観に触れられる幅広い内容のコンテンツを好む人が多いようです。もちろん、テレビドラマ、映画、マンガなどを通して勉強する人もいます。
主な日本語力検定
以上でご紹介した教材やコンテンツを利用して日本語を勉強する人の中には、日本企業への就職や日本の大学への留学を目指す人も大勢います。企業や大学に指定された試験に合格しておくことは、彼らにとって非常に重要です。
日本語を母語としない人のための日本語能力検定で最も有名なのは、「日本語能力試験(JLPT:Japanese Language Proficiency Test)」です。JLPTの公式Webサイトによると、JLPTの所定の級に合格していると、以下のような場面で役立ちます。
- 日本の出入国管理上の優遇を受けるポイントがつく
- 日本の医師、歯科医師、看護師などの国家試験や准看護師試験を受験できる(N1、条件の一つ)
- 日本の中学校卒業程度認定試験で国語の試験が免除される(N1またはN2)
- EPA(経済連携協定)に基づく看護師と介護福祉士に応募できる(条件の一つ)
参考:日本語能力試験JLPT「日本語能力試験のメリット」
また、以下のような場面でも世界的に広く利用されているのが、JLPTです。
- 大学などの日本語専攻コースの学生にとって単位または卒業資格取得の条件になっている(主にN2またはN3)
- 日本語を使う仕事への就業または昇給、昇進の際に優遇される(主にN3以上)
- 日本の大学の外国人留学生入試の受験資格の一つになっている(主にN2以上)
就職や入試の募集要項によく登場する試験としては、他に実用日本語検定(J.TEST)や日本語NAT-TEST、ビジネス日本語能力テスト(BJT)などがあります。
日本語能力試験(JLPT)の5つの級と難易度
最後に、日本語を学ぶインドネシア人の多くが受験する日本語能力試験(JLPT)の級と難易度をご紹介します。
JLPTの5つの級
JLPTにはN5からN1まで5つの級があります。N5が最も易しくN1が最も難しい級で、年齢に関係なく、どの級からでも受験できます。JLPTの公式Webサイトによると、各級の認定の目安は以下のようになっています。
N1 幅広い場面で使われる日本語を理解できる(ビジネス上級レベル)
- 読解:論理的に複雑な文章や抽象度の高い文章を読んで、内容が理解できる
- 聴解:幅広い場面で自然なスピードの会話やニュース、講義が理解できる
N2 日常的な場面で使われる日本語を理解できることに加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる(通訳も可能なビジネスレベル)
- 読解:新聞や雑誌の論旨が明確な文章を読んで、内容が理解できる
- 聴解:日常的な場面で自然に近いスピードの会話やニュースが理解できる
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる(日常会話上級レベル)
- 読解:日常的な話題の文章を読んで、内容が理解できる
- 聴解:日常的な場面で、やや自然に近いスピードの会話が理解できる
N4 基本的な日本語を理解できる(日常会話がある程度可能な初級レベル)
- 読解:基本的な語彙・漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題を読んで、理解できる
- 聴解:日常的な場面で、ややゆっくり話される会話であれば、内容がほぼ理解できる
N5 基本的な日本語をある程度理解できる(初級レベル)
- 読解:ひらがな・カタカナ・日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた語句・文章を読んで、理解できる
- 聴解:教室や身の回りなどでゆっくり話される短い会話が理解できる
各級の合格率
以下の表は、2022年7月に実施されたJLPTのインドネシアにおける受験者数と、日本以外の国の受験者の合格率を級別にまとめたものです。
(2022年第一回7月分)
レベル | 受験者数(インドネシア) | 合格率(全体)※ |
N1 | 293名 | 35.1% |
N2 | 911名 | 47.1% |
N3 | 2,033名 | 51.0% |
N4 | 2,783名 | 48.3% |
N5 | 1,511名 | 53.4% |
合格率:国際交流基金が発表している認定率。上記のパーセンテージは日本以外の海外すべての受験者の中の認定率。
受験者数を見ると、インドネシアではN3以下の初級~中級レベルの受験者が圧倒的に多いことがわかります。また、世界の合格率を見ると、N1の難易度が群を抜いて難しいことが伺えます。なお合格点は級ごとに設定されており、いずれも満点の50%前後となっています。
参考:日本語能力試験JLPT「過去の試験データ|応募者数・受験者数・認定者数および認定率/実施国・地域別応募者数・受験者数」
多様な教材を工夫して活用するインドネシア人学習者たち
ご紹介した通り、インドネシアで出版されている日本語の教科書やJLPT対策の参考書はあまり多くありません。最近は通信販売で輸入品を購入することもできますが、やはり総じて割高ですし、店によって品ぞろえも価格もまちまちです。
一方でスマートフォンとネット環境さえあればアクセスできるWebメディアやSNS、モバイルアプリなどを利用して高校や大学の授業を補完したり、独学したりする人も大勢います。
インドネシアはSNSユーザーが多く、さらに日本を含む海外への留学熱も高まっています。YoutubeやInstagram、あるいはTikTokなどで人気を集めるアカウントは今後も増えていくことでしょう。
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インドネシアではどのような日本語の教科書が使われていますか。
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みんなの日本語(スリーエーネットワーク出版)、にほんご☆キラキラ1~3(国際交流基金出版)などがあります。インドネシアで手に入るものには限りがあるので、手作りの教材を用意する教員もいます。
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インドネシアで利用されている日本語教材にはどのような種類がありますか。
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教育機関で用いられている教科書や日本語能力試験(JLPT)対策参考書の他、NHKなどの日本語学習者向けWebメディアやアプリ、SNSのコンテンツなども利用されています。
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日本語能力試験(JLPT)とは何ですか。
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日本語能力試験(JLPT:Japanese Language Proficiency Test)とは日本語を母語としない人の日本語力を測定・評価するための試験で、世界各国で実施されています。
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日本語能力試験(JLPT)にはいくつの級がありますか。
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日本語能力試験(JLPT)には初級のN5から上級のN1まで5つの級があります。
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読後のお願い
弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
そこで、弊社からの不躾なお願いになってしまうのですが、是非SNSでこちらの記事をご紹介いただけないでしょうか。一言コメントを添えてシェアしていただけると本当に嬉しいです。そうやってご紹介いただくことで関係者全員の励みにもなりますので、どうか応援宜しくお願いします!
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SNSでも積極的に情報発信をしています
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