インドネシアにおける外資法人(PMA)の設立手順と書類準備
- 公開
- 2022/09/17
- 更新
- 2023/12/24
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インドネシアで外資法人(PMA)を設立する際、最初に行うのが会社設立の登記に向けた手続きです。
登記するためには定款の作成から必要書類・番号の取得、資本金の払込まで多くのステップがあり、スムーズに進めるためにはその設立手順を押さえておくことが重要です。
そこで本記事では、インドネシアで外資法人を設立する手順と書類準備についてまとめました。
また、インドネシアでは書類や機関、システムなどを略語にすることが多く、初めて見る言葉に戸惑う方も少なくありません。そこで記事の最後には外資法人設立の際に登場するインドネシア語を、略語をメインにまとめているので、併せて参考にしてみてください。
外資法人(PMA)設立前の検討事項
まず、インドネシアで現地法人(PMA)を設立する前に検討しておくべき項目について解説します。今から紹介する項目は登記に向けた手続きの際に必要となる情報なので、早い段階で準備・検討しておきましょう。
会社名
会社の名前は3単語で構成された名義であることが必須です(数字・記号は不可)。すでに存在する会社と同じ名前または類似の名前を付けることはできません。社名候補は3つ程度用意しておくとよいでしょう。
株主・資本比率
株主は2人必要で、法人でも個人でも構いません。1人(1社)が99%、もう1人(1社)が1%という比率も可能です。
資本金
投資調整庁規則2021年4号では、現在の外資企業(1つの事業コード)の最低払込資本金は100億ルピアとなっています 。2023年11月6日現在の為替レートで約9,600万円です。
払込資本金
払込資本金の振込先は、登記に向けた手続きの際に開設する法人口座になります。納税者登録番号(NPWP)が取得できたらすぐに銀行口座の開設と資本金振込み(資本金払込証明発行)を進められるように、準備しておくことが重要です。
また、振り込み元は日本本社名義の銀行口座からでなくても、設立に必要な書類であるStatement Letterに明記していれば問題ありません。ただ、多額の送金を行うことになるので、できれば本社から「海外子会社設立目的」で出金・送金するのがよいでしょう。
取締役
取締役は最低1人の任命が必須で、日本人でも可能です。また、会社設立にあたり、日本人が取締役になる場合でも、本人がインドネシアに入国する必要はありません。ただ、取締役が入国しない場合は、行政・税務署・金融機関への提出書類に取締役から委任状を受け取った委任者が代わりに手続きを行うことになるため、オペレーションがやや複雑・面倒になることに留意してください。
監査役
監査役(コミサリス)は1人以上の任命が必須で、日本本社から任命する場合は取締役以上の方が適任です。
監査法人
非上場の場合は監査法人の利用義務はありません。
会社住所(登記の住所)
バーチャルオフィスやレンタルオフィスでも可能です。オフィスの確保(会社所在証明書発行)を最初に確定させないと後の手続きが止まってしまうため、早めに確保しておきましょう。
法人口座
本口座開設の前に、「資本金送金用の仮口座」を開設します。資本金の入金はできるけれど、売上金などの入金ができない状態の口座です。売上金なども入金できる法人口座を開設する場合は銀行窓口に行く必要があり、遠隔での開設はできません。
この口座の開設には取締役の個人情報(パスポートコピー、就労ビザ、NPWPなど)が必要ですが、株主と取締役からの委任状を持って代理人が窓口に行けば開設可能な銀行もあります。提出書類に不備がなければ通常は1週間以内に開設できますが、3週間〜1か月かかる場合もあります。
会計年度
会計年度は法人設立時に設定可能です。なお、日系企業は4月~3月を会計期間にしている企業が多いなかで、インドネシア企業は通常1~12月に設定している企業が多いです。
インドネシア法人のメールアドレスと電話番号
インドネシア法人のメールアドレスと電話番号が、定款作成時に必要となります。
外資法人(PMA)の設立手順(概要)
現地法人(PMA)の設立は、法務人権省から設立許可証を取得することがゴールになります。大きな流れは下記のとおりです。それぞれのステップで用意すべき書類や番号も紹介しているので、参考にしてみてください。
- 会社名の予約
- 定款(会社設立証明書、AKTA Pendirian)の作成・設立公正証書の申請
- 所在地証明書(SKTU)の取得
- 納税者番号(NPWP)・課税事業者番号(PKP)の取得
- 資本金の払込
- 法務人権省への申請
- OSS RBA(※後述)システムの申請
上記の手順は一般的な流れで、事業分野によってはさまざまな規制が設けられており、その規制によっても必要となる手続きや書類は変わります。詳細はどのようなビジネスをインドネシアで展開するかによって変わってくるので、該当する事業とそれに関する規制等をよく検討するのが大前提です。
なお、会社名の予約から資本金の払込みまでは投資調整庁が担当となりますが、それ以降は法務人権省、商業省へと担当が変わります。投資調整庁で必要な手続きとしては、上記以外にPendaftaran Penanaman Modal(投資登録、旧Izin Prinsip)があります。ほとんどの場合は法務人権省からの設立許可が下りてからで間に合いますが、資源、防衛、エネルギー、インフラに関する事業などいくつかの分野の会社は事前に登録する必要があります。
外資法人(PMA)の設立手順(詳細)
会社名の予約
法務人権省に会社名の予約を行います。
定款の作成・設立公正証書の申請
公証人(Notaris、ノタリス)を通して定款(会社設立証明書、AKTA Pendirian)を作成します。定款には、一般的なフォーマットがあるためそれに則る形になりますが、以下のような情報を記載します。
- 会社の名称と住所
- 会社の設立目的と趣旨、事業の内容
- 会社の存続期間
- 授権資本、引受資本、払込資本額
- 株式数、株券種類と種類毎の株式、株式に付帯する権利、一株の額面価格
- 取締役及び監査役の職責と人数
- 株主総会の開催場所の決定と運営方法
- 取締役、監査役の選任、交代、解任に関する規定
- 利益処分、配当に関する規定
定款作成後、設立公正証書(SK、Surat Keputusan Pendirian)の認証を受けることができます。
所在地証明書(SKTU)の取得
会社が所在する地区の役所、または会社が入居するオフィスビル から所在地証明書(SKTU、Surat Keterangan Tempat Usaha)を取得します。
納税者番号(NPWP)・課税事業者番号(PKP)の取得
会社の納税者番号(NPWP)を取得します。納税者番号の作成は、所在地を管轄する税務署(KPP、Kantor Pelayanan Pajak)で行います。
その後、必要に応じて課税事業者番号(PKP)を取得します。顧客からVAT(付加価値税)を回収する場合、課税事業者としての登録が必須です。ただし、年間売上が48億ルピアを超えていない場合には登録・回収をしなくてもよいとされています。
銀行口座開設
法人名義の銀行口座を開設します。上記で発行してきたAKTAやNPWPが必要になり、かつ、銀行によって求められる書類が異なるため、確認のうえ手続きしましょう。
インドネシアの銀行としては、BNI、BCA、Mandiri、BRIがメジャーです。ビザや健康保険の支払いなどをスムーズに行えるよう、以上のような大手銀行で口座を開設することをおすすめします。
資本金の払込
開設した口座へ資本金を送金し、銀行から資本金払込証明書を取得します。
法務人権省への申請
公証人が法務人権省に設立登記の申請を進めていきます。
OSS RBAの申請
登記までの一通りの手続きが完了したら、電子システム「OSS RBA」への申請を行います。事業者データや事業活動計画などを入力すると、事業者識別番号(NIB)の申請が可能です。
参考:JETRO「インドネシア 外国企業の会社設立手続き・必要書類」
参考書籍:『オムニバス法対応インドネシアビジネス法務ガイド』
インドネシア会社設立に関わる基本用語
- KBLI:
Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesiaの略で、インドネシア標準産業分類のこと。5桁の数字から構成される。投資調整庁規則2021年4号では、外国企業は1つのKBLIを取得するたびに100億ルピアを投資額として追加することが必要と定められた。 - OSS RBA:
Online Single Submission Risk Based Approachの略で、様々なビジネス関連のライセンスの申請・発行ができる電子システムのこと。前身のOSS Ver1.1と比較すると、資本やKBLIによって企業のリスクをレベル分けしたリスクベースという考え方が盛り込まれている点に違いがある。 - NIB:
Nomor Induk Berusahaの略で、事業者識別番号のこと。13桁の数字で構成されていいる。 - Sertifikat Standar:
リスクベースの四段階で上ふたつの、高リスク、中・高リスクに当てはまる場合に必要な証書。事業実施のための条件を満たしていることを確認したうえで、中央政府または地方政府が発行する。尚、中・低リスクの場合は事業者本人が発行したものでOK。 - SIUP:Surat Izin Usaha Perdaganganの略で、営業許可書
- Izin Lokasi:立地許可
- Akta:定款
- NPWP:Nomor Pokok Wajip Pajakの略で、納税者番号のこと。尚、納税申告等についてはOSS RBAではなく、djpオンラインというシステムを利用する。
- WLKP:
Wajib Laporan Ketenagakerjaan Perusahaanの略で、義務的雇用報告書と訳される。オンライン化されており、毎年12月WLKPを通して労働大臣に従業員の数などの雇用状況の報告をする必要がある。外国人が就労許可・ビザ取得をする際にもこの報告書の提出が必要となる。 - LKPM:
Laporan Kegiatan Penanaman Modalの略で、投資進捗報告書のこと。中小企業は6か月ごと、大企業は3か月ごとにこの報告書の提出が求められている。 - SABH:
法務人権省一般法務総局のオンラインシステム。公証人はこのシステムを通じて会社設立の登記を行う。
外資法人の設立は計画的に進めることが大切
外資法人の設立では、登記をするまでにさまざまなステップがあります。必要書類はその都度集めていくことになりますが、途中で何か書類が不足していたり、番号を取得できていなかったりすると、申請が滞ってしまうため注意が必要です。いつまでに外資法人を立ち上げたいのか、いつまでに事業を開始したいのかなどを計算し、計画的に準備を進めましょう。
また、設立の際にはさまざまなインドネシア語の略語が登場するので、手続きの際に混乱しないよう、基本的な用語は事前に押さえておくのがおすすめです。
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海外の企業がインドネシアで会社を設立する場合、どのような形態が可能ですか。
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海外の企業がインドネシアで会社を設立する場合の形態としては、駐在員事務所、現地法人、支店の3つがあります。
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インドネシアのNPWPとは何ですか。
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インドネシアのNPWPとは納税者番号で、企業の所在地を管轄する税務署(KPP、Kantor Pelayanan Pajak)へ申請し、取得します。
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インドネシアで会社を設立する場合、資本金はいくら必要ですか。
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投資調整庁規則2021年4号によると、インドネシアにおける外資企業の最低払込資本金は100億ルピアとなっています。
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記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
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