日本語の学科があるインドネシアの大学と卒業生の進路
- 公開
- 2023/03/04
- 更新
- 2023/12/27
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インドネシアは世界で2番目に日本語学習者が多い国です。高校で第二外国語として日本語を習う生徒も多く、私たちの想像以上に多くの人が日本語に触れた経験を持ちます。
さらに、日本企業への就職や観光ガイドなどを目指す人たちのために、日本語学科や日本文学科を設置する大学も多数あります。
本記事では、日本語を学べる多くの大学の中で特に有名な大学をご紹介します。加えて、学生たちの就職活動や大学卒業後の進路などについても見ていきます。
インドネシアで日本語の学科がある大学の数
インドネシアの教育文化省高等教育総局「STATISTIK PENDIDIKAN TINGGI (高等教育統計)2020」によると、2020年現在、インドネシアには4,593の高等教育機関があります。この中には教育文化省が管轄する公立と私立の大学、大学院、ディプロマ(職業教育に特化した学校または大学に併設された課程)の他に、宗教省やその他の団体が管轄する学校が含まれます。
国際交流基金の2021年度調査によると、このうち、日本語を学べるのは164機関です。ただしこの164機関には、日本語学科などの日本語専攻課程がある学校と、専攻はないが日本語科目がある、あるいは日本語を学べる課外活動がある学校も含まれます。
同調査では、164機関で日本語を学ぶ学生は、合計で27,454人とされています。
参考1: DIREKTORAT JENDERAL PENDIDIKAN TINGGI「STATISTIK PENDIDIKAN TINGGI 2020|P.51-52 Bagaimana sebaran perguruan tinggi berdasarkan provinsi?」
参考2:国際交流基金「2021年度日本語教育機関調査 日本語教育機関数・教師数・学習者数(地域順/教育段階別)」
日本語の学科があるインドネシアの有名大学
続いて、インドネシアで日本語を専攻できる大学の中から、特に有名なところをご紹介します。日本語専攻の中には、日本語学科、日本文学科、日本語教育学科などが含まれます。
インドネシア大学(Universitas Indonesia、UI)

ジャカルタ郊外のデポック市に位置する、12の学部を持つ総合大学です。日本語以外にも、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、アラビア語の学科が開講されています。
日本語専攻は学士課程の日本文学科と修士課程の日本地域調査研究の2つで、2022年現在の学生数は学士課程が282人、修士課程が26人となっています。
インドネシア大学日本文学科の学生は、日本語の語学やコミュニケーション演習の他、日本の古典、日本社会学、日本文化学、日本近現代史、大衆文化と映画研究、マスメディア研究、観光地理、通訳・翻訳、ビジネス言語など、様々な内容を学習します。
同学科では、学生は卒業までに下記のような知識や技能の習得が必須であるとしています。
- 日本語能力試験(JLPT) N3レベル以上の日本語能力
- グループディスカッションができる力、意見を述べる力、責任を持って議論を展開できる力
- 体系的な報告書の作成、共同作業、発表や説明ができる力
- 日本の文化・歴史・社会・文学について体系的かつ構造的に報告書を作成し、説明できる力
- 日本語で日本の文化、歴史、社会、文学についてコミュニケーションができる力
- インドネシア語と日本語の双方向の翻訳ができる力
- インドネシアと日本の文化、歴史、社会、文学を調べて課題を見つけ、解決策を提示できる力
- ITを活用し、日本の文化、歴史、社会、文学の情報収集ができる力
参考1:Pangkalan Data Pendidikan Tinggi「Universitas Indonesia」
参考2:Fakultas Ilmu Pengetahuan Budaya Universitas Indonesia「PROGRAM STUDI JEPANG」
ダルマプルサダ大学(Universitas Darma Pursada, UNSADA)
ダルマプルサダ大学は、東ジャカルタに位置する私立大学です。この大学は、インドネシアから日本に留学したインドネシア人が中心となるインドネシア元日本留学生協会(Persada)が両国への感謝の証として設立したという、珍しい歴史を持ちます。
日本語専攻にはディプロマ(日本語専攻)と学士課程(日本語・日本文化学科)の2つがあり、2022年現在の学生数はディプロマ3年が43人、学士課程が998人となっています。
ダルマプルサダ大学は、日本の「モノづくりの哲学」を大切にした教育を行っています。日本の様々な大学、企業、日本の機関と協力し、交換留学やインターンなどを実施しています。
ダルマプルサダ大学の日本語と日本文化学科の学生は、卒業までに以下のような知識や技能の習得が必須とされています。
- 日本語能力試験(JLPT)N2もしくはJFスタンダードB1レベル以上の日本語能力
- 基礎的な日本語の言語学の理解、日本語・インドネシア語の通訳能力
- 現代日本の文化や慣習について説明できる能力
- ものづくりの考え方を活用し、問題解決とその実行ができる能力
参考:Pangkalan Data Pendidikan Tinggi「Universitas Darma Persada」/「Universitas Darma Persada – Bahasa dan Kebudayaan Jepang」
パジャジャラン大学(Universitas Padjadjaran, UNPAD)
パジャジャラン大学は、西ジャワ州の州都バンドゥンとその近郊にキャンパスを置く総合大学です。同大学の日本文学科は、1963年にインドネシア初の日本語専攻学科として設置された日本語教育学科を前身とする歴史ある学科で、今も大変人気があります。2022年時点の学生数は464人です。
パジャジャラン大学日本文学科の学生は、日本語、日本文学、日本文化、現代日本事情、日本の社会・思想学、翻訳、ビジネスコミュニケーション、観光やIT分野の日本語などを学び、卒業までに以下のような知識や技能の習得が必須とされています。
- 専門分野に関して口頭・文章で説明できる日本語能力試験(JLPT)N3以上の能力
- 日本の文学、言語学、文化、翻訳について理解できる能力
- 文学、言語学、文化、翻訳について実践的な分析ができる能力
パジャジャラン大学日本文学科も日本の多くの大学と連携しており、例えば、広島大学、山梨大学、福岡大学、立教大学、関西大学、早稲田大学などと交換留学協定を結んでいます。また、企業や地方自治体、国際交流基金などとの連携によるインターン、セミナー、交流会なども開催しています。
参考1:Pangkalan Data Pendidikan Tinggi「Universitas Padjadjaran」
参考2:Universitas Padjadjaran「Sastra Jepang」
インドネシア教育大学(Universitas Pendidikan Indonesia、UPI)
インドネシア教育大学はバンドゥンにある公立大学で、科学や体育など様々な科目の教師養成課程を設置しています。日本語専攻は大学と大学院にあり、2022年時点で学士課程に89人、修士課程に11人が所属しています。
インドネシア教育大学の日本語教育学科では、日本の大学との交換留学プログラムの実施や、日本語能力試験(JLPT)対策クラスの開講などを通して、学生の日本語能力向上を支援しています。
同学科の学生は、卒業までに以下のような知識や能力の習得が必須とされています。
- 漢字:1,000~1,400字
- 語彙:6,000~10,000語
- 日本語能力試験(JLPT) N2以上
- 社会、文化、教育、科学、技術に関して、聞き、話し、読み、書き、訳す能力
インドネシア教育大学日本語教育科の卒業生の多くは、高校や専門学校、大学などの教職員になっています。また、インドネシア国内外で日本の政府関連機関や日本企業で働く人も増えています。
参考1:Pangkalan Data Pendidikan Tinggi「Universitas Pendidikan Indonesia」/「Universitas Pendidikan Indonesia – Pendidikan Bahasa Jepang」
参考2:Departemen Pendidikan Bahasa Jepang FPBS UPI「KURIKULUM」
ガネーシャ教育大学(Universitas Pendidikan Ganesha、UNDIKSHA)
ガネーシャ教育大学はバリ島北部にある公立大学です。
現在の日本語教育学科は2011年に開講したもので、バリ島の大学で唯一の日本語専攻学科です。学生たちは教育学、日本語学、社会言語学、文化学などの学習を通して、日本語教師の他、ツアーガイドや、通訳者、翻訳者を目指しています。学生数は、2022年時点で125人です。
ガネーシャ大学の日本語教育学科は、国内外の大学と積極的に協力して様々なプロジェクトやイベントを実施しています。また、日本人コミュニティーとの連携や、日本のホテルでのインターンなども活発です。
参考1:Pangkalan Data Pendidikan Tinggi「Universitas Pendidikan Ganesha」
参考2:UNIVERSITAS PENDIDIKAN GANESHA「Pendidikan Bahasa Jepang – Profil Program Studi」
日本語専攻学科の卒業生の進路
卒業生の就業先
日本語専攻の学科の卒業生の多くは、日本語力を活かせる就職先を探します。例えば、以下のような就職先が挙げられます。
- 在インドネシア日系企業
- 日本の企業(在日本)
- 翻訳・通訳者
- 日本語教師(高校、大学、技能実習生研修機関など)
- 日本語研究者
- フライトアテンダント
- ツアーガイド
- 大使館・領事館、外務省などの省庁や政府関連機関
インドネシアの日系企業や日本にある企業へ就職した人の中には、翻訳や通訳を仕事とする人もいれば、貿易、観光、ITなどその他の専門分野で活躍する人もいます。
就職活動
インドネシアでは、新卒一括採用の文化がないため、日本の学生のように卒業前に一斉に就職活動することはなく、卒業後、就業まで期間があく人も大勢います。また、親戚、知人、先輩などの紹介で就職先を見つける人も比較的多いのが特徴です。
各大学にはキャリア開発センターが設置されており、在学生だけでなく卒業生も利用します。キャリア開発センターは、学生や卒業生に就職先を紹介する他、提携する企業や団体へのインターン募集、ジョブフェアなどの就活イベントやキャリアデザインのためのセミナーの開催なども行います。
インドネシアの学生や卒業生の中には、こうしたキャリア開発センターを活用する以外に、担当教員からの推薦や卒業生からの紹介、同窓生のSNSグループからの情報などを頼りに就職先を探す人もいます。他には、求人情報サイトや民間企業が開催する就活イベントも利用されます。
インドネシアで日本語ができる若者を採用したいと考える企業は、一般的に、求人情報サイトへの情報掲載の他、日本語専攻がある大学のキャリア開発センターと連携したり、既に自社で働いている社員に知人や後輩を紹介してもらったりして、候補者を探します。
インドネシアの学生が日本語を学ぶ目的
国際交流基金の調査によると、インドネシアでは日本語を学ぶ目的として、全体では「アニメ・マンガ・J‐POP・ファッション等への興味」や「日本語そのものへの興味」と答える人が最も多くなっています。
一方で高等教育機関で日本語を学ぶ人に限定すると、「将来の仕事・就職」という答えがトップです。
このように、インドネシアでは日本や日本語そのものへの興味から日本語専攻の学科を志す人がいる一方で、将来の日本企業への就職やそのためのステップとしての日本留学を目指して、「戦略的に」日本語を学び始める人が大勢います。
参考:国際交流基金「2018年度日本語教育機関調査 日本語学習の目的8-1/8-4」
きっかけは何であれ、インドネシア人の日本語話者には非常に優秀な人が多く、驚かされることが多々あります。
インドネシア進出に興味がある企業様は、インドネシア人留学生をインターンとして迎えたり、インドネシア人スタッフを募集したりしてみると、インドネシアやインドネシア人に対する新しい発見があるかもしれません。
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インドネシアで日本語が学べる大学はいくつありますか。
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国際交流基金の2021年度調査によると、インドネシアの大学を含む「高等教育機関」で日本語専攻学科、日本語を学べる科目、または課外活動があるのは、全部で164機関です。
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インドネシアの日本語が学べる大学として有名なのはどこですか。
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インドネシア大学(Universitas Indonesia、UI)、ダルマプルサダ大学(Universitas Darma Pursada, UNSADA)、パジャジャラン大学(Universitas Padjadjaran, UNPAD)などが有名です。
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インドネシアの日本語学科の卒業生はどのような職業に就きますか。
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大学で日本語を学んだ学生たちの多くは、日本企業や領事館などの政府系機関への就職や、通訳者、翻訳者、ツアーガイド、日本語教師など日本語力を活かせる仕事を探します。
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読後のお願い
弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
そこで、弊社からの不躾なお願いになってしまうのですが、是非SNSでこちらの記事をご紹介いただけないでしょうか。一言コメントを添えてシェアしていただけると本当に嬉しいです。そうやってご紹介いただくことで関係者全員の励みにもなりますので、どうか応援宜しくお願いします!
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SNSでも積極的に情報発信をしています
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